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税務の勘所Vital Point of Tax

東京高裁 前の裁判で認定された自社株評価額、その後も「拘束力ある」

2020/01/29

 相続税に関する税務訴訟で納税者が勝訴した後、遺産分割が調わずに法定相続分で当初申告していた相続税について、遺産分割が成立したことを理由に前の税務訴訟で認定された自社株の評価額を用いて更正の請求をしたところ、国税当局が当初申告の株評価で請求すべきだとして更正処分をしたことで、その取消しをめぐって争われていた東京高裁の判決が下された。

 判決のカギとなるのは、行政事件訴訟法第33条で定められている「処分または裁決を取り消す判決は、その事件について、処分または裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する」という内容だ。

 東京地裁の一審判決では、「争点となった個々の財産の評価方法や価額に係る認定・判断ならびにこれらを基礎として算定される課税価格および相続税額に係る認定・判断に、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定および法律判断として、行政事件訴訟法33条1項所定の拘束力が生じているということができる上、後の相続税法32条1号に基づく更正の請求(中略)に係る事件についても同一の被相続人から相続により取得した財産に係る相続税の課税価格および相続税額に関する事件であることに変わりがない以上、 行政事件訴訟法33条1項にいう『その事件』として、上記の拘束力が及ぶものと解するのが相当」として納税者に軍配が上がった。

 控訴審では、非上場株式の相続税評価について争った前の裁判の判決の拘束力がどこまで及ぶか、どのような判断が拘束力を生じるかが争点のひとつになった。

 東京高裁は2019年12月4日、相続人の「更正の請求」を認めなかった税務署の処分に対し、その取消しを求める「訴え」を適法とした上で、本件も前の判決と同様の法律関係にある「その事件」に該当すると認めるのが相当と判断。前の裁判の判決での非上場株式の評価方法や価額は、前の判決の主文を導き出すのに必要な判決理由中の事実認定等であるため、結果として後の行政処分である当局側の処分等を拘束するとして、納税者を勝たせる判決を言い渡した。

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